2010年8月アーカイブ

 東京生まれの人で、東京タワーに行った事が無い人が多いように、数千枚のCD、LPをコレクションしているのに、誰でも知っている曲が無かったりする。僕の場合は、ビゼー「アルルの女」、グリーグ「ペール・ギュント」がそれで、今まで一枚もCD、LPを持っていなかったため、この際、買う事にした。

 特に、「ペール・ギュント」は、母親が持っていた25cmLPのオーマンディ指揮の演奏で擦り切れるほど聴いた曲。特に「ソルヴェイグの歌」が好きで、母によるとこればかり聴いていたらしい。今聴いても本当に美しい。グリーグの叙情性ここに極まった感が有る名曲である。ここではその「ソルヴェイグの歌」の他、否が応でも盛り上がる「山の魔王の宮殿にて」、「アルルの女」より「ファランドール」を紹介する。

グリーグ「ペール・ギュント」組曲より

山の魔王の宮殿にて

ソルヴェイグの歌

ビゼー「アルルの女」組曲より

ファランドール

 おなじみラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。CDを調べていくと、まず目に付くのがラフマニノフの自作自演、これは、ラフマニノフが絶賛したストコフスキーとの共演で、演奏も素晴らしいが、いかんせん録音が古い。これを忠実に現代に蘇らせたのがアシュケナージ。アシュケナージには数種の録音が有るが、結局、最初のコンドラシンと共演した盤が最高の出来だった。

 ところが、それら全てに冠絶する名演が存在しているのである。巨人リヒテルである。打鍵の強靭さ、濃厚な表現のロマンティックさ、すべての面で、原作を超えているのではないかとさえ思える演奏。この録音は、よくオーケストラが薄いと言われるが、確かに超一流の響きではないかもしれないが、リヒテルの変幻自在のソロによく付けているという意味ではブラヴォーである。

 モノラルで全曲公開しようかとも考えたが、これはバリバリの現役盤なのと、ステレオでないと真価が伝わらない可能性もあるので、1楽章と3楽章のサワリをステレオで公開することにした。これで、この演奏の素晴らしさが認知され、CDの売り上げが上がればと祈っている。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

第1楽章冒頭

第3楽章後半

 ホロヴィッツ&ワルターと言えば、1948年のチャイコフスキーが名高いが、これもそれに勝るとも劣らない名演。ブラームスのピアノ協奏曲第1番、1936年、コンセルトヘボウでのライヴである。全曲公開したいのだが、1楽章に残念な欠落(アセテート原盤破損)が有る他、曲自体も渋く、ここでは1楽章の欠落以降と3楽章を紹介する。この曲に対する認識が変わること請け合いである。

 もともと当時としては驚異的な名録音だったのだが、コロムビアからレコード化されたLPではチャイコフスキーとカップリングされており、ブラームスは片面に押し込まれたため音が痩せていたが、これは、日本ブルーノ・ワルター協会の復刻で、両面にたっぷりカッティングされたものからMP3化した。

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

第1楽章欠落以降

第3楽章

 パワーアンプのドライバー段だが、MELZ1578以上の音は想像できなかったのだが、今回、東芝6SN7GTB未開封新品ペアを入手し、アンプに差してみた。

 果たして、音は、MELZ1578を超える鮮明な音。やはり東芝の球は素晴らしい。これで、僕のアンプの球は、終段のロシア製以外、すべて東芝製になった。終段だけは、東芝の300Bは無いし、かといってWEは高価すぎるので仕方がないが、その他は、輸入球の必要性を感じない。

 死刑については、もっともっと情報が公開されるべきである。法務省がどのような経緯で死刑執行の命令を出すのか、匿名でいいから囚人たちの生の声、執行人の苦悩、場合によっては執行の様子(死刑囚の許可が不可欠)など。

 死刑の実態をつぶさに見た裁判員が、果たして死刑判決を下せるのか。僕は以前、死刑制度は「どちらかと言えば反対」と書いたが、今回の刑場公開で、反対の気持ちが強まった。少なくとも、「やむをえない」とは思わない。

 「こち亀」は、連載が始まった中学生の頃から読んでいる。このところご無沙汰だが、今も続いているのだろうか。いずれにしても、この連載、週刊漫画としてはギネス入りは間違いないだろう。

 さて、「こち亀」のアニメ化が発表された時には一抹の不安が有った。しかし、始まってみると、原作の良さをかけらもおろそかにしない作りの良さに、ひと安堵した。また、起用された歌手たちの豪華さも、フジテレビのアニメだけの事はあった。特に、「だまって俺についてこい」、「毎日、ノープロブレム」には毎週力をもらった。

 そんな歌を集めたCD「こち亀百歌選」がリリースされたのは何年前だろう。今も入手可能かわからないので、ここではモノーラルで6曲を紹介する。ステレオで聴きたい方は、CDを探してください。

kochikame.jpg

だまって俺についてこい(青島幸男の名調子、天童よしみの歌)

気持ちだよ(吉田拓郎の知られざる名曲)

淑女の夢は万華鏡

葛飾ラプソディー

毎日、ノープロブレム

おいでよ亀有

 今日のニュース23Xでは死刑制度の特集があるのだが(ちなみに僕はどちらかと言えば死刑反対派)、すっかり忘れて睡眠薬を飲んでしまった。果たして起きていられるか。

 今日は満月なのか、こちらのデータを見ると、よくわからないのだが、少なくとも僕の目には真ん丸に見える。いい天気で満月を見ることができて、今日は満足である。

 某所(公の場所ではない)で書いた、僕の半生。

 幼いころから父親のDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)がひどく、人生を左右する肝心のタイミングに限って父親が酒を飲んで帰ってきて精神的、肉体的暴力で暴れる。それに、歪んだエディプス・コンプレックスによる嫌がらせの陰湿なこと..これは思春期の子供二人の心に取り返しのつかない傷を残した。

 この暴力は、僕が30代になっても続き、ついに家庭崩壊。両親が別居。それでも父親はとぼけるばかりで自分の非を認めようとしない。そんな中、ついに母親が切れ、ノストラダムスが予言した1999年7月、「出かけてくる」といって外出したまま帰らない。夜中の零時になっても帰らないので警察に捜索願。 翌朝警察から電話「亡くなっておられます。焼身自殺です」との事。父親への抗議の自殺だった。警察での黒焦げの遺体との対面で、僕は重篤なPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、熱いものがすべてダメになり、5年以上風呂に入らなかった。妹は人が変わってしまい、僕は故郷を捨てて東京へ。一家離散。

 さすがの父親もこれは堪えたらしく、反省、優しい父親に変わったのだが、3年後、「病院に行く」という最後の言葉を残し、行方不明に。会社に電話しても来ておらず、家に電話すると留守番電話。病院にも来ていないとの事。普通なら、「また親父寝坊して..」で終わるところなのだが、この時に背筋に寒気が走り、「これはただ事ではない」と判断し、会社に電話して、職員に家まで見に行ってもらったところ、父親は、車庫で首を吊っていた。遺書があり、「未熟な老兵が、選ぶべき道はただ一つ、速やかに命を絶つことのみ、葬儀不要、焼き捨ててください。」

 これを読んだ人が次々に僕を離れていく。いつかは言わなければいけない事。しかし、「衝撃的」内容。いつ告白するべきか、考えあぐねている。

 暑い!、暑い!、クーラーも効かない。体が溶けそうだ。

 毎度おなじみ、ルロイ・アンダーソンの名曲集である。曲の素晴らしさに惹かれ、決定盤とされているアーサー・フィードラー指揮のCDを買って、がっかりされた方も多いと思う。

 しかし、ルロイ・アンダーソンの名曲には、作曲者自身による自作自演という知られざる決定盤が有ることを知らない人も多いと思う。

 アンダーソンは、そのレパートリーのほとんどを、モノーラルとステレオで録音しているのだが、圧倒的に素晴らしいのはモノーラルの方である。

 オーケストラは、彼のために編成された特別編成。何でも、NBC交響楽団、ニューヨーク・フィルのメンバーが中心らしい。まさに「プロフェッショナル」な仕事ぶりである。一曲だけと言われたら、"The Waltzing Cat" である。途中、テンポが上がる部分の絶妙さは、どんな指揮者もかなわない。

 ここでは、そのモノーラル録音から11曲を、音を悪くしたMP3で公開する。サンプリング周波数を半分にしているので、元の音に戻すのは不可能です。良い音で聴きたい方は、こちらでCDを購入してください。

Blue Tango

The Syncopated Clock

Plink,Plank,Plunk!

Fiddle-Faddle

A Trumpeter's Lullaby

The Typewriter

Forgotten Dreams

The Waltzing Cat

Bugler's Holiday

Sandpaper Ballet

Sleigh Ride

 比較のために、ステレオ録音を数曲、こちらも音質を落としています。欲しい方は、こちらからどうぞ。

Plink,Plank,Plunk!

Fiddle-Faddle

The Waltzing Cat

Sandpaper Ballet

 吉田拓郎の名曲である。「今日までそして明日から」。オリジナルとつま恋2006をYouTubeから。

 部屋の明かりは丸型蛍光灯なので仕方がないが、それ以外、玄関、キッチン、風呂場の明かりをまとめてLED化した。違和感が無いように「電球色」を選択。

 点けてみたが、今までの電球型蛍光灯と全く変わらない。これで、事実的に電球の寿命を考えずに生活できる。世の中どこまで快適化するのだろうか。

 それにしても、技術の進歩は凄い。青色LEDの発明で、LED電球が可能になった。あのボディの中に、トランスと整流回路が入っているわけで、全波整流だとすると、電灯線の周波数が倍になるのでちらつきが減る。

 購入は、ビックカメラのポイントを使ってタダ同然、消費電力も減り、いい事ずくめである。

[追記]

 ちらつきが減ることに関しては、必ずしも理屈通りにはならないことがわかった。それは、LEDに残光が少ないため、電灯線の二倍の周波数で点滅しており、目の疲れが増えるとの結果が出ている。すでに対策済みの電球もあるようだが、これは間違いなくコンデンサを利用しており、寿命上別の問題が生じる。僕の家に使った電球は、ちらつき対策済みのものである事もわかったが、これからLED電球を買おうとしている方は、頭の隅にでも入れておいてほしい知識である。

 チャイコフスキー「くるみ割り人形」は素晴らしい。チャイコフスキーの最高傑作かもしれない。一言でいうなら、無駄が無い事。踊るためだけのような曲が一曲も無い。聴くなら当然全曲を聴くべきで、それが無理なら第二幕全曲。組曲やハイライトでは真価は決してわからない。

 さて、ここで鳴り物入りで登場したラトルの全曲盤である。売る事だけを考えれば、三大バレエハイライトでもよかったわけで、ここで「くるみ割り」を全曲録音したという事は、ラトルはこの曲の真価を見切っていると見た方がよいであろう。

 「くるみ割り」全曲には、ドラティ/コンセルトヘボウという、まごうかたなき決定盤が有り、ラトルがそれに迫れるか、あわよくば超えるか、といったところを期待して予約購入し、聴いてみたのだが...

 う~む。ドラティを100点とすれば、78点といったところか。まず、相変わらずラトルがベルリン・フィルをコントロールできていないばかりか、ラトル・サウンドといった主張も感じられない。目立つのは小細工。一旦弱くしてクレッシェンドするような、昔セルがよく用いた手法や、チェリビダッケの出来損ないのようなアーティキュレーションによる強弱。肝心の表現の根幹になるべき主張が無い。

 昔、ラトル/ウィーン・フィルのリハーサルを見学した事が有るのだが、かなり細かいリハで、オーケストラから不満が出ないのが不思議だった。演奏も立派。ラトルはベルリン・フィルでも同じようにリハーサルしていると思われ、だとすると、この演奏を聴く限り、ラトルとベルリン・フィルは相性が悪いとしか言いようがなく、ベルリン・フィルは早急に次なる指揮者を見つけないと、取り返しのつかない事になると思った。

 TRONAL300Bだが、やはり音楽によるエージングは効くようで、どんどん音が柔らかくなってきた。

 こうなると答えは一つ。MELZ1578の出番である。かっこいいメタルベースにオレンジ色の光を発するこの球は、一皮むけた300Bと相性ピッタリになった。東欧球コンビとは思えないHi-Fi音である。

 写真はMELZ1578である。

 それにしても、安かろう悪かろうの東欧球の常識を覆す、MELZ1578、TRONAL300B、それにイコライザに差したEHゴールド12AX7であった。

melz1578.jpg

 日韓併合100年を機に発表された菅談話。戦後50年で発表された村山談話を踏襲するものだが、日韓の良い関係に結びつくものとして評価したい。

 問題は、この発言を批判している安倍晋三をはじめとした保守派の馬鹿どもである。鳩山首相は総理辞任に当たり、次の選挙には出ないと宣言した。その他の元首相たちも、一線から身を引いている。

 安倍晋三は、時代錯誤の「美しい国」などというテーマで恥さらし政権を運営した挙句、ねじれ国会を引き起こし、挫折した落伍者である。このような大切なタイミングでぬけぬけと出てくるなど、恥の上塗りとはこの事である。

 ここ一週間くらい、胸の痛みに悩まされている。最初は肺が痛んでいるのかと思ったのだが、咳は出ないし、どうも、あばら骨より外側のようだ。痛みは移動し、右胸からみぞおちのあたりを行ったり来たりしている。

 これが噂に聞く肋間神経痛なのか。痛みが半端ではなく、深呼吸しても痛いし風呂にも入れない。明日は用事が有り病院には行けないが、痛みが引かないようなら近いうちに病院に行こう。

 新しく入手した真空管で、システムに変更が生じた。フラットアンプ増幅部の2本の真空管をマツダ12AX7Hi-Fiロングプレートに交換、カソード・フォロワを東芝の通信用ロングプレートに交換、パワーアンプのドライバー段をシルバニア6SN7WGTA茶ベース(メタルベースは温存)、終段を、TRONAL300Bプレミアム・グレードに交換。

 やはりマツダの球は素晴らしい。通信用も同じ。やはりロングプレートは音が良い。

 パワーアンプのTRONAL300Bは、音が前に出てくるタイプで、ドライバー段がMELZ1578だと音が少々出しゃばり過ぎになる。そこで新しく入手したシルバニアを差すとバランスが取れた。

 以上の変更で、見違えるように音が良くなった。もう超高価なWE300Bの必要性は感じない。

 20年かけて集めた国産12AX7、42本である。最近入手したマツダ製2本で、42本に達した。このうち使い物になるのは3本に1本くらい。いずれにしても、12AX7探しは、この辺で打ち止めにしたい。

 下の写真は左から、42本の12AX7、右はマツダ12AX7Hi-Fiの箱、旧漢字「眞空管」の表示が見える。

12AX7_42.jpgmazda12ax7hi-fi.jpg

 かっぱ寿司は、日本の回転ずし業界ナンバーワンなのだそうである。どんなにうまいのかと楽しみにして食べに行ってみた。

 店に入ると、「ん?変だな」。何とも生臭いにおい。鮮度の悪い材料を使っているのか、まさか。と思い、席へ。

 席につくと、店員が「茶わん蒸しいかがですか」と尋ねてきたので「お願いします」。すぐ出てきたので一口。「ん!?」卵が臭い。よほど悪い卵を使わないと、こんなにおいはしない。

 こうなると、寿司には期待できない。案の定、鮮度の悪い材料の嫌なにおいがするトロやサーモンを食べたのだが、止めは「どす黒いウニ」。こればかりは取る気がしなかった。

 こんな店が日本一かとなると、日本人の味覚を疑いたくなる。一皿100円寿司は他にも有るが、もう入る気がしない。情けないとしか言いようがない。

 先日のEHゴールド12AX7の大当たりで、すっかりロシア球への認識が変わった僕なのだが、この際300Bにも挑戦してみようという気になった。ロシア製300Bというと、三栄のキットに付いてきたエレハモの質の悪さ、スヴェトラーナ300Bの音が悪く作りもいびつなど良い印象は無かったのだが。

 ヴィンテージサウンドの選別は確かなものが有り、この際TRONAL選別品を買ってみた。ロシア製300Bでは悪い思い出が有り、一抹の不安が有ったのだが、アンプに差して音を出して、不安は吹き飛んだ。

 中国球の平板な音でもなく、低品質なロシア球の音でもない。奥行きと深みと厚みが有る音で、これならWE300Bは必要ない。38万円も出費して、ショップのいい加減なペア組のWE300Bを高い金出して買うよりも、確かな選別のロシア製300Bの方が、安いうえに音はWEに勝るとも劣らず、これはお買い得である。

 能書きによると、特許出願中の方法で72時間エージングしたとの事だが、やはりスピーカーをつないで音楽でエージングしないと、本領は発揮しないだろう。これから音がどう変わっていくのか興味深い。

tronal300b.jpg

 考えてみると、現在使っていないプリアンプのイコライザ部分に、希少な国産球を使うのはもったいない。それに、真空管について一筆書いた以上、最近のロシア球の動向も知っておく必要があるだろうと、ロシア製12AX7を3本買い、イコライザに差してみた。

 中国球の選別球であるゴールデンドラゴンは既に定評が有るので改めて試すまでもないが、ロシア球は、以前スヴェトラーナ12AX7で酷い目(マイクロフォニック・ノイズの嵐)に遭ったので、あまり期待はしていなかったのだが...

 買ったのはEHゴールド12AX7。決して安くはない。国産球が買える値段である。期待と不安の中、イコライザ・アンプに差してみた。電源を入れると、「静か」!、マイクロフォニック・ノイズも無い。音はどうか。フラットアンプに差して音出ししたのだが、いい音。これは驚きだった。これを超えるのは、テレフンケンのダイヤマークや東芝(マツダ)のロングプレートだけ(要選別)であろう。

 これなら自信を持ってお勧めできる。真空管初心者の皆さんは、リスクの多い流通球より、中国や東欧の球のセレクト品を使われる事を、自信を持ってお勧めしたい。少なくとも「ハズレ」は無いから。

ehgold12ax7.jpg

 ゴールデンドラゴン真空管の購入はこちら、ロシア球の購入はこちらで。

 昔、テレビの11PMでおなじみだった映画評論家の今野雄二さんが首つり自殺した。楽天的で、およそ自殺とは無縁とも思えるキャラクターだっただけに、衝撃が走った。

 自分も死のうとした事が有るが、人間の運命は、どう転ぶかわからない典型である。

 真空管の選び方に秘訣なんて無い。6SN7では各国の球を集め尽くしたが、プリアンプに使う12AX7には泣かされた。

 まず、基本的事実を。現在世界で真空管工場が有るのは中国と東欧諸国だけであり、西側諸国や日本はとっくの昔に製造を止めている。現在完成品として発売されている真空管アンプの99%(ほぼ100%)は、中国製や東欧諸国製の球のセレクト品が使われており、それなりの音は出る。コンスタントに商品を供給するには、これらの球を使わざるを得ないからである。

 また、ギターアンプの世界では、今でも真空管の熱狂的ファンが多い。ここでは真空管の歪み特性を好む人が多く、故意に飽和させてプレートを赤熱させて使い、コンサート毎に球を替えるなど過激な使い方をする人もおり、実際、需要に応じて中国東欧球の品質も向上している。ギターアンプでは、パワー球は消耗品とされている。高価なブランド球を使うなど、もっての外である。

 それでも真空管にこだわりたい人のために、この文章を書いた。やけどしたければ、これから先は、読む必要は無い。

 今ではCDが中心になり、LPレコードを聴く人も減ったので、以前ほどシビアではなくなったものの、今でもLPレコードを聴く人は、イコライザの真空管選びで苦労するに違いない。

 何が問題になるか。ガサガサブツブツノイズが出る球(意外に多い)は論外としても、ホワイトノイズとマイクロフォニックノイズは曲者である。マイクロフォニックノイズとは、真空管がマイクロフォンのように振動し、スピーカーから音が出る事である。振動に対する強度の問題である。この他にも、カラカラノイズや電極の異常振動など、使い物にならないノイズ発生球が国産、輸入を問わず多数存在し、堂々と売られているのである。

 全般的な傾向として、プレートが大きい球は音が良い代わりに振動に弱い。プレートが小さな球は、音はイマイチだが振動には強い。真空管というのは、真空なガラスの中に建てられた鉄板建築である。建てつけの良し悪しは目視である程度判断できる。建てつけの悪い球は絶対に買ってはならない。最近の中国東欧球では、振動対策を重視し、プレートが小さいものが多い。

 名にしおうテレフンケンダイヤマークやムラード英国製の球を試したこともあるが、これでも必要数の倍は買わないと、良い球は揃わない。全般的に海外球はリスクが多い。12AX7に関する限り、RCAやGE等のアメリカ球で良いものに出会った事が無い。以前6SN7で、ペアで7200円も出して買ったタングソル茶ベース米国製は、中国球にも及ばない音で、早々に手放した。反面、東欧諸国球でも、旧ソ連だが、MELZ1578(6SN7相当)のような思いがけない掘り出し物も有るので、一概に東欧球が悪いとは言い切れない。

 とにかくイコライザ・アンプではノイズが重要で、ノイズと音が両立した球は、現在中国や東欧で作られている球では滅多に満足のいく球には巡り会えない。フラットアンプやパワーアンプでは、ノイズが問題になる事は少ないので、これらの球でも不満が出ることは少ないと思われるのだが...

 比較的確実な球を望むのなら、日本製の球を選ぶことである。真空管全盛期に作られた球の音が良いのは言うまでもない。例えば表記が「真空管」ではなく「眞空管」になっているものは、古いわけで、音が良い球に巡り会える確率が増える。しかし、未開封新品ならともかく、元箱入りでも中身だけ変えた中古もあるので注意が必要である。中古かどうかはガラスの曇りやゲッターの減り具合で判断できる。

 ましてや、得体の知れない白箱(軍箱と間違えない事)入りのものは、細心の注意が必要である。白箱入りで緑表示の軍用球が多数出回っているが、これらは、中古やセレクトで外れた品が多く、ろくな球に出会った事が無い。中にはガラスにヒビが入っている球もあった。白箱の球は、まれに掘り出し物も無いではないが、最もリスクの多い球選びであろう。

 根気よく探せば、大きなプレートで振動にも強い最強の球に巡り合えることもあるが、業者もしたたかで、このような良い球は逃さず高値を付けていることが多い。リスク承知なら、ネットオークションという手もあるが、初心者にはおすすめできない。

 テレフンケンダイヤマークなどの名品をふんだんに買える予算がある人を除き、イコライザ、フラットアンプ、パワーアンプ共に、現在作られている中国東欧球のセレクト品を買うのが最も無難である。少なくとも半導体アンプの金属的な音よりはマシな音がすると思うが、これでは面白みがない。これにこだわり出すと、真空管のドツボにはまる事になる。

 国産球でもメーカーにより、また電極の構造により、音が異なる。大雑把にメーカーに順位を付ければ、一位東芝(マツダ)、二位は日立と松下、三位はNECとテン、といったところか。東芝は、半導体時代になっても最後まで真空管にこだわったメーカーだけの事はある。流通量も比較的多く、国際的にも評価が高い。

 国産球にはメーカーが独自にセレクトした通測用、通信用、Hi-Fiなどの表記が付いた球もあるが、あまりあてにはならない。肝要なのは、作りの良さと、年代である。

 他にも、国産球には、メーカーが特別な御用達用に独自にセレクトした選別品が有り、有名なところではNHK、電波研究所、ヤマハ、LUXなどが知られるが、最近は買い尽くされて見かけなくなった。有っても高値が付いている事が多い。

 僕は、12AX7に関する限り、リスクの多い海外製は敬遠し、国産球ばかり30本くらい持っているが、現在プリアンプに差している球はすべて東芝で、イコライザは中くらいのプレートサイズ、フラットアンプは初期のロングプレートで、音にも満足している。

 他にも、黒いプレートは音が良いとか、色々な俗説があるが、中国東欧製のセレクト品を除き、下手に欲を出すと、使い物にならない球をつかまされるのが落ちである。 真空管業者は、真空管試験機で合格した球だけを並べていると胸を張るのだが、これがいい加減で、ヒーターが切れておらず、プレート電圧をかけて電流が流れるかどうかをテストしただけである。使い物にならないとクレームをつけても水掛け論になり、結局泣き寝入りという事になる。

 一般に流通している球は、使い物にならない球が大半な事を思うと、安易に真空管に手を出すものではないという、何とも消極的な結論になってしまう。

 健康に生きているうちに、最高の音に浸りたい。刹那主義的な僕は、手持ちの最高の球で現在ステレオを聴いている。プリアンプ(12AX7)のイコライザは東芝の通測用振動強化タイプ、フラットアンプは昔の東芝のロングプレート、いずれも必要数6本の5倍の約30本から選別したもの。パワーアンプのドライバー(6SN7)は旧ソ連製MELZ1578、終段(300B)は妥協して中国製と思われるトライオード製。あとは、お金を貯めてWE300Bを買うのみである。

 この文章は、伊達に公開しているものではない。数多くの失敗、無駄遣いなどの経験で得られた、読んでいると涙が出るようなノウハウ集である。謹んで読んで欲しいものである。

 僕が東京で愛用しているプリアンプは、三栄無線のキットSP-77(CRパーツは自分流にアレンジ)。要は、マランツ7の回路を現代に蘇らせたモデルである。このアンプについては、ネット検索をかけても、僕のホームページしかヒットしない。よほど売れなかったか、組み立てが大変なので、挫折した人が多いのかはよくわからない。凝りまくった良いキットだっただけに残念である。

 ここで謎が有るのである。イコライザ回路のマイカコンデンサが、マランツ・オリジナルは5600pF(0.0056μF)なのだが、これが6800pF(0.0068μF)に変更されているのである。昔、購入時に三栄無線の技術担当店員に質問したのだが、オリジナルではRIAA偏差が多いので変更したとの事。確かに当時のマランツ7やマッキンC-22のイコライザ特性は、中音域が膨らんでいる(ラジオ技術別冊による)。この特性が、当時のアンプの音のカラーになっていた事だけは間違いない。

 これを回避するためのパラメータ変更なのか、5600pFを6800pFに変えると特性がどう変わるかが、測定器も無いし、東京ではLPプレーヤーも無いのでわからない。雑誌「無線と実験」でこの三栄のキットの組み立て記事を書かれた藤本伸一氏のホームページは消滅しており、質問のしようが無い。藤本氏はこのキットを6800pFで組まれていたと記憶している。この藤本作のアンプを三栄無線で試聴したのだが、いい音だった。僕も6800pFで組んだ。現在入手可能なサンバレーのキットは5600pF。パーツの交換は簡単なのだが、できる限り半田ごては当てたくない。

 NF型イコライザは設計したことが無いのでわからないのだが、CR共振回路でコンデンサの容量が増えると共振周波数が下がる。という事だと、高い方のNFBが増えて、中音域が落ちる。これ位しかわからない(正しいという保証は無い、今更ながら情けない)。CR共振回路の共振周波数は1/2πCRだから、680kΩと6800pFで、、、...あーわからん。

  この事について、現在の三栄無線のホームページに質問したのだが、「論より証拠、自分で試してください」と返事が来た。もう答えられるスタッフがいないのだろう。どなたかこの謎がわかる方がいらっしゃいましたら、どうかご教示ください。下の回路図は、クリックするとポップアップします。よろしくお願い致しますm(_ _)m

m7eq.jpgsp77.jpg

[追記]

 その後計算したのだが、5600pFと680kΩの共振周波数は約41.8Hz、6800pFだと約34.5Hzである事がわかった。という事は、かなり低い周波数に共振している。となると、最終特性は、この周波数から減衰が始まる事になる。つまり、この周波数が低いと、中音域のカーブが変わり、三栄無線の技術者が言うとおり、オリジナルで起こっていた中域の膨らみを減らすことができる事になる。

 しかし、超低域の周波数で約7.5Hzの差は、大きな差ではない。周波数特性の計算には対数を使うような気もするが、これ以上は考えたくない。1アマの免許を取った16歳の頃には、どんな回路でも解析したものだが、今の頭脳は当時の頭脳ではない。少なくとも、あまり過剰に気にする事は無さそうである。

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