ムラヴィンスキーの秘蔵音源

 ベートーヴェンの「田園」、それにワーグナー集。東京文化会館の客席で隠し録りされた音源のCD化である。さすがに音は悪いが、それをも超越する物凄い演奏だった。「田園」は、ムラヴィンスキーが演奏後、心から満足していたと云われる演奏で、ドイツ、オーストリア系の演奏ではないが、「極まっている」という意味では、1930年代のワルター/ウィーン・フィル以来であろう。

 この「田園」は、午後9時前後に聴いていたのだが、ちょうど「嵐」の楽章の頃に、外が凄まじい雷雨になり、偶然とはいえ、まさにホールでは味わえない生々しい迫力に圧倒された。その後の終楽章のしたたるような弦の歌わせ方も素晴らしい。前後するが、端正だがよく歌う1楽章、2楽章の田園風景、小鳥の声、3楽章の楽しさ、全てが完璧な完成度で造形されていた。

 これをも上回る物凄い演奏が、ワーグナーである。ムラヴィン流のロマンの極みでうねるようなトリスタンとイゾルデから前奏曲と愛の死、ジークフリートより「森のささやき」での最弱音と見事なアンサンブル、とてつもない爆発するような迫力の「ヴァルキューレの騎行」。やはりムラヴィンスキーは凄い。

 とにかくダイナミック・レンジが極限といえるほど広く、これは録音にはとても収まりきれないと思われるのに、こんな悪い録音でもこれだけの感銘をもたらしてくれるムラヴィンスキーは、やはり超人である。返す返すも生に触れられなかった事が残念でならない。

 このところ、友達が色々な演奏を聴かせてくれているのだが、最もショックを受けた演奏がこれである。

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コメント(2)

昨夜の東京地方の雷雨は凄かったとか。
それとムラヴィンスキーの田園を重ねて聴かれて、
素晴らしい経験をされたのですね。

鶴のとても若いころ、ひょんなことから行ったムラヴィンスキーの東京文化会館の公演、「ムラヴィンスキーは飛行機がお嫌いで船でしか来日しないので もう来ないかも知れない!」という噂のあった時代?? じゃあ、行ってみようか?という軽いノリ。
無知というものはオソロシイですね。

1977年の公演です。 
聴き終わった鶴は 嵐・雷鳴に打たれたかのように・・・・。
音楽会であんなに感動した経験は生まれて初めてでしたし、
それ以降もあそこまでの感動はないというのが現実。
「何がどうだったから良かった」を超越していました。
鶴はこの謎を解くために まだまだ音楽を続けているのかも知れません。

 鶴さん、コメントありがとうございました。

 ムラヴィンスキーの生を聴かれたのですね。羨ましい。これは一生の宝ですよ。僕は1980年と1986年に、チケットを買って楽しみにしていたのですが、ムラヴィンスキーは来ませんでした。音楽家の来日中止で、これほど悔しい思いをした事は有りません。

 ムラヴィンスキーの生を聴かれた方によると、ムラヴィンスキーの真価は生でなければ分からないとも言われます。鶴さんは一生の宝を手にされたのですね。

 今回の貧弱な録音でも、これだけの感銘を与えてくれるのですから、ムラヴィンスキーはやはり「超人」だと思います。

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このページは、Maestroが2008年7月29日 22:22に書いたブログ記事です。

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