トスカニーニ

 先日、友達との電話で指揮者談議になり、「一番好きな指揮者を一人だけ挙げよ」という話になり、迷った。フルトヴェングラーはもちろん素晴らしいし、幾度となく生で感動したクライバー、チェリビダッケも外し難い。そういえばワルターという手も有る。そんな中で選んだ「一人」は、トスカニーニである。とにかく演奏にムラが無い点、主張(たたみかける迫力と強靭なカンタービレ)が一貫しているという意味でトスカニーニを選んだ。実際、自分が一番CDプレーヤーにかける事が多い指揮者はトスカニーニである。どんな曲でも安心して聴いていられる。ヴェルディのオペラ全曲からスケーターズ・ワルツまで。

 さて、それでは「トスカニーニの最高傑作を一つだけ挙げよ」という話になり、これも難しい。友達は、レスピーギのローマ三部作。これは確かに素晴らしい。しかし僕は、やはりトスカニーニと言えばイタリア・オペラに代表される歌入りのもの。しかし、トスカニーニのオペラ全曲盤は、概して歌手が良くない(それでも「オテロ」、「ファルスタッフ」、「仮面舞踏会」は素晴らしいと思う)。そこで苦渋の選択は、ヴェルディの「レクイエム」。これは、トスカニーニのヴェルディとしては歌手が非常に良く(ネルリ、バルビエリ、ディ・ステファノ、シエピ)、演奏も、トスカニーニのヴェルディここに極まれりという印象を受ける。「怒りの日」の迫力はまるで阿修羅の如きである。

 余談だが、この演奏でのディ・ステファノ起用にはエピソードが有る。この曲でも特別に重要なパートであるテノールについて、トスカニーニが「ディ・ステファノでなければ嫌だ」と譲らず、予算の無いRCAは苦肉の策としてディ・ステファノに、「トスカニーニと共演できるだけでも光栄な事だからノーギャラで」と持ちかけた。こんな失礼な持ちかけに、血の気の多いディ・ステファノは当然激怒してギャラの支払いを要求。結局ギャラが支払われて、めでたくディ・ステファノの出演が実現したのだが、ディ・ステファノはその後、このような失礼な要求をしたRCAで歌う事は二度と無かった。

 リハーサルではいつも怒り狂うトスカニーニだが、これだけは別で、ピアノ合わせでディ・ステファノがトスカニーニに注文をつけた。一緒に歌っていたシエピが「ヤバイ、トスカニーニに逆らってはいけない」とディ・ステファノに合図したのだが、トスカニーニは怒りもせず「なるほど、これは君が正しい」といった具合。トスカニーニは終始ゴキゲンで、休憩時間の茶菓子も自分で用意し、4人の歌手をもてなしたらしい。ディ・ステファノは自画自賛のベスト・パフォーマンスで、これで、永久に超える事が出来ないであろうヴェル・レクの歴史的名演が誕生したのである。

 例によって、わざと音質を悪くしたサワリ2ヵ所(「怒りの日」では、トスカニーニ渾身の叫び声が聞こえる)。

「怒りの日」冒頭

「サンクトゥス」

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: トスカニーニ

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.korngold.jp/mt/mt-tb.cgi/163

コメントする

このブログ記事について

このページは、Maestroが2008年6月23日 16:23に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「エアコンが故障」です。

次のブログ記事は「今度は飛騨牛偽装」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

アイテム

  • 2011= 8=14  3=04.jpg
  • marantz_wood.jpg
  • 2011= 7=11 17=05.jpg
  • 2011= 6=19 12=03.jpg
  • tennstedt.jpg
  • marantz7_5.jpg
  • marantz7_4.jpg
  • 2011= 5= 6 15=31.jpg
  • 2011= 5= 4  9=44(1).jpg
  • zaerix.jpg